「国産の竹を使って自転車フレームを作れないか」
と考えたものの、素人の我々にはどうやって作るのか全く検討がつきません。
必然的に、まずは竹の扱いに長けた(シャレではありません)職人か、自転車フレームビルダーに相談してみようという流れになりました。

私が最初に訪ねたのは、長野県上伊那にある「アトリエ キノピオ」のビルダー 安田さんです。

【Webサイトはコチラ】
http://www.kinopio.com/products/TOP.html

サイトを覗いてみるとわかりますが、トップ画面にいきなり木製の自転車が掲載されています。
実際にお話を伺ってわかったのが、長野県の依頼を受けて県産の木材を使って自ら製作されたということです。

アトリエは元々馬小屋で、自宅も自分で改築されたそうです。

お邪魔します。

薪ストーブもありました。

注文で多いのがスチールフレームのオーダー。
お客さん一人ひとりにぴったり合うフレームを丁寧に作り、塗装もされます。
ここを訪れた理由は、木製フレームを製作された実績をもとに、竹製フレームも作れないか訊きたかったからです。

「竹の自転車?あぁ、基本的には木と同じ作り方でできると思うで」

安田さんは大阪出身。コテコテの関西弁でしたが、標準語に変換して書きます。
雑談を幅広く交えて3時間くらい語っていただきましたが、要約すると

「竹フレームは作れる。作ろうと思ってまだトライしていないが、木製フレームと作り方は基本的に同じであると考える。
ただ、日本の竹はあまり自転車フレームに向いていない。なぜなら日本の竹は薄いので、1本の竹から材料があまり取れないから。
何より、切り出した竹をそのままパイプに見立ててフレームにしてしまうという構造は、ビルダーとして「いかがなものか」という見解。
理由は「強度」と「ビルダーとして手抜きな感じがする」の2つ。ザンバイクは接合部分が麻でグルグル巻きになっているが、ここは弱点と捉えている。
竹でも木でも、リアエンドからぐるりと曲線を描いて、トップチューブからダウンチューブ、BBにかけて一筆書きのような切れ目の無いフレームが作れる。
植物の特性を生かしたフレームは鉄にも劣らない頑丈なものに仕上げることができる。」

だそうです。
板材と板材の間にカーボンシートを挟み込み、強度を高めて接着した「集成材」を使うのがポイントだそうで、あらゆる方向からかかる力に強くなるのだとか。

でも、やはり木製フレームを作るには相応の手間がかかるようで、粉塵が飛ぶ環境ではフレーム塗装ができないため、片手間で作れるものでは無いそうです。
現状はスチールフレームの加工・塗装のオーダーが多いため、木製フレームの製造に手が回っていないようです。

「作り方はいくらでも教えますよ。自分たちで作ってみたら?」

と言われました。これはクラフト倶楽部の出番だな…と感じた瞬間です。

竹製フレーム、売るとしたら一本いくらになるのでしょうか。
ちなみに木製バイクは完成車で35万円ほどだそうです。

※余談
イタリアの博物館に飾ってある古い木製バイクの写真を見せてもらいました。生活に密着していたことが伺えるのが「移動式床屋」「鶏を前かごに入れて売る」専用の自転車があったことです。

「こんな自転車作れませんか?」

と尋ねると、

「今ならトレーラーを改造した方が実用的かな。床屋自転車なんて、床屋以外では非常に使いにくい(笑)」

とのこと。新しいヒントが隠されていました。
改造トレーラーで移動式の何か(サービス)を実現すると、面白いことになるかもしれませんね。

イタリア人の考え方に影響されたのか、都会を離れて田舎で自転車を作る安田さんは、私達の考え方に通ずる部分が多いと感じます。

「この近辺は景色が良くて、南アルプス山麓を眺めながら家族でサイクリングすると最高」

自転車を通じて「楽しむこと」をお客さんに提供する、それが安田さんの仕事なのですね。

私達の考えや活動も知ってもらうべく、この2冊をお渡ししました。

唐突に「河川敷を走りに行こうか」とポタリングのお誘い。
紅葉の美しい伊那谷、イタリアのハンドメイドバイクとヘルメット、グローブを用意されれば、そりゃもう行くしかないでしょう!

「このフレームの塗装、ここは職人が筆で塗ってると思うで」

ちょっと風が冷たくて刺激的でしたが、サドルの上でビルダーとお話できるとは思いませんでした。
まだまだバンブーバイク製作にはほど遠い状況ですが、安田さんにはこれからお世話になる場面が度々出てくるかもしれません。今度は自走で来よう。

By Mercy