ちょうど1年前のことですが、佐渡島(新潟県)を走りました。

佐渡島は沖縄本島に次ぐ面積を持つ島で、島を一周するコースは210kmあります。今回、私は日程の都合で、島の北半分である「大佐渡」を回ることにしました。

走行距離は、124.5km。獲得標高は1,750mとなりました。

てっきり島の外周を走るフラットなコースだと思っていましたが、小さなアップダウンを繰り返して、相当、走りごたえのあるコースでした。

人気の高いロングライドイベントが例年開催されており、昨年の参加者はなんと3,496人。私も、実際に佐渡を走ってみて分かりましたが、本当に素晴らしいコースで、多くのサイクリストが集まるのにも、納得しました。

景色が美しい

なんといっても素晴らしいのは景色。海岸線沿いの棚田。ちょうど田植えの時期で、青空が写り込んでいました。

海に向かう、棚田の風景

日本海の荒波によって形成された岩。刑事ドラマに出てくるような断崖絶壁もあります。

断崖絶壁、その向こうには紺碧の海

その他にも、無数の岩礁が約50kmにわたって連なる景勝地を堪能することができます。

七岩海岸の夫婦岩

佐渡の最高標高は金北山(1,172m)。海岸沿いも断崖絶壁がある地形のため、島の外周のコースでも起伏に富んでおり、思った以上の獲得標高になりました。

多彩な景色もあり飽きることなく、何度も立ち止まっては、写真を撮りましたが、これが適度な休憩となり、無事に完走することが出来ました。

携行食にした名物・笹団子

前日にお会いした人からいただいた、新潟名物「笹団子」。今回は、これを携行食にしました。

ササの葉でくるみ、イグサの紐で中央を結ばれています。食べるときは、バナナのように上半分だけを剥いてかぶりつきます。中はあんこの入ったヨモギ団子でした。

ササには殺菌効果があります。そのため、笹団子は戦国時代に携行保存食にされており、上杉謙信の家臣が発明したという俗説もあるそうです。

しかも、天然素材のラッピングで、「プラスチックフリー」ですから、倫理的なサイクリストには絶好の携行食かもしれません。

日本の原風景?

走っていて感じたのは、自然が美しいこともさることながら、街並みが古く、タイムスリップしたかのような錯覚に陥ります。

「原風景」とは、「① 原体験から生ずる様々なイメージのうち、風景の形をとっているもの」「② 変化する以前の懐かしい風景」という意味です(大辞林第三版)。

高度成長期に生まれた私は、「開発」の名の元で、故郷の姿が変っていく様を見てきました。そんな「変化する以前の懐かしい風景」が、佐渡には、残っているように感じました。

佐渡グランドホテルのモダンな外観

ちなみに宿泊したのは、「佐渡グランドホテル」。設計を手掛けたのは、日本を代表する建築家・菊竹清訓氏です。竣工は1967年ですから、築52年になります。

インテリアにも趣向が凝らされている

スクラップアンドビルドの現代において、半世紀前の建築物が現役で活躍している様子を見ることが出来たのはラッキーでした。

想像の域を超えませんが、佐渡は物流がよくない分、そこに住む人達には物を大切に長く使う気質があるようです(実際にそのような話を、地元の人に聞きました)。そのため、島の環境も乱開発されることなく、古き良き日本の原風景が残っているのではないかと感じました。

最後に

物流の面では便利とは言えないこの地域は、確かに物質的には恵まれていないかもしれませんが、その反面、豊かな自然が残されています。

雄大な自然と美しい日本の原風景に出会いたい方は、佐渡のロングライドがお勧めです。

ホテルの客室から見た、加茂湖の朝焼け

松井 雅永