ジテツーを始めるまで

私は2年ほど前に自転車通勤(以下ジテツー)を始めました。 今でこそ当たり前になりましたが、ジテツーを始めて間もない頃はただただきつくて一種の苦行のように感じていた時期がありました。私の自宅は標高およそ1100m、職場は標高1300m。3㎞をひたすら登る通勤路だからです。 最初から大変さは容易に想像できましたが、それでも、何か運動をしたかったこと、かつて通学で利用していた自転車に親しみを感じていたこと、そして何よりジテツー経験者の先輩たち(山の中にもかかわらず数十名います)から勧められたことにより、次第に思いは大きくなっていき、「よし私もジテツーしてみよう!」と決意しました。

職場までひたすら続く登り坂!

きつくて、きつくて。。。ジテツーを始めた頃

気分が盛り上がりいよいよ始めたジテツーでしたが、やはり過酷でした。職場に到着するまで何度も休憩を取りながら、やっとの思いで目的地にたどり着く日々。着いた時には疲労困憊でした。仕事前にこんなに疲れて良いのか?私は一体何をやっているんだ。と自問自答する日々でもありました。 ただ、こんな時、私の支えになったのが勧めてくれた先輩が言っていた言葉です。 「はじめはきついけどすぐに慣れるよ!」

ひたすら登るんだから当然きつい。でも続けていればすぐに慣れるはず。と自分に言い聞かせながらのジテツーが続きました。 当時の私の様子は、真っ直ぐに走れず気付いたら蛇行運転をしていたり、歩いている猫と同じスピードで走ったり、きつすぎて気分が悪くなったりしたこともありました。はっきり言ってジテツーを辞めた方がよいレベルだったと思います。 それで、私の中で一つの答えが出ました。「はじめはきついけどすぐに慣れるよ!」の「すぐ」には個人差があるということです。元々の運動能力や経験が違う人の「すぐ」は、自分の「すぐ」ではない。「すぐ」だけを鵜呑みにしてはいけない。 その答えに到達したとき、ボチボチ走ろう。気長に乗ろう。と何かから解放されたように気分が楽になりました。

自然を身近に感じるジテツー

気持ちが変わるとジテツーとゆっくり向き合えるようになりました。すると不思議なもので少しずつ周りの景色が目に入るようになり、自然の声が耳に届くようになり、自然からサポートされているような錯覚を覚えるほど自然を身近に感じるようになりました。清々しい気持ちで走れることが多くなりました。今でも登り坂はキツいですが、自宅から職場までの所要時間は2年間で40分から25分になりました。 自分の成長も嬉しいですが、更に嬉しいのは、最近では景色を楽しむ心のゆとりができたことです。 鳥の鳴き声、虫の声、若葉、深緑、花々たち、雄大な山の景観。自然のなかを走っていると移りゆく季節の変化をじかに感じ、車で走っていたころは到底気付くことの出来なかった新たな出会いに気持ちが和らぎ癒やされました。

花の写真は自転車が写っていませんが、ジテツーの時に撮りました。

自分だけのジテツーを

私はこの2年間で自転車の辛さも魅力もどちらも味わいました。たかが2年間乗っただけの初心者に過ぎませんが、それでも皆さんにはジテツーをお勧めしたいです。 先日、長雨の影響で自転車に乗れない日がずっと続いたとき、ふと自転車に乗りたいなぁーと思った瞬間がありました。ジテツーを始めた頃には考えられない感情です。きついなりに自転車で味わえる心地よさと爽快感、大自然の安らぎを心身共に求めていたのだと感じました。 ジテツーを考えているけど躊躇している、という方はぜひ始めて、続けてみて下さい。 自分だけのジテツーの楽しみが見つかるかも知れません。

後日談ですが、こんな僕でも最近自転車に乗り始めたばかりの中学生の息子と比べたら少し速いのです。先日息子から「お父さん速いね」と言われて思わず「若いからすぐ慣れ・・・」となりました。その後「まーまずは安全第一でね!」とかぶせ気味に言いましたが、先輩方の「すぐ慣れるよ」発言の気持ちが判った瞬間でした。

興梠 康徳