竹で自転車フレームを作っているという京都のビルダーにお会いしてきました。
訪れたのは、京都市下京区にお住まいの坂東陽平さんのご自宅兼工房。

板東さんは、戦国時代から受け継がれる伝統の京弓(竹製)の技術を応用して、世界で唯一の竹製自転車フレームを製作するビルダーです。

元々は自転車競技の選手としてレースに出場していました。その後、カナダのワーキングホリデーから帰国し、実家のある徳島で竹林伐採の仕事に出会います。その際、竹の侵食によって森林が荒廃している様を目の当たりにし、保全活動を進めました。その中で伐採した竹を有効活用できないかと思案したとき「竹で自転車を作れないだろうか」と思いついたそうです。

そこから独学でフレーム作りがはじまりました。
作りはじめた当初は、丸竹(切り出したままの竹)の形をそのままパイプに見立てて作る手法を採用していました。海外では既にこの手法で作られた竹フレームが多数存在していたため、これを製品にして売る(プロのビルダーを名乗る)ことは考えていなかったそうです。

ある時、板東さんは、京都の御弓師 柴田勘十郎氏の竹弓ワークショップに参加しました。そこで、古来より伝わる京弓のしなやかさ、強さ、美しさに衝撃的な感動をおぼえ、弓師に弟子入りします。プロのビルダーとして、竹弓製法を応用した世界で唯一の竹製フレームを製作することを決意しました。

訪問時は、どんな種類の竹が自転車に向くのか、どんな方法で作ったのか、そのためにどんな道具や設備、材料が必要であるのか、工夫した点なども交えながら、親切丁寧に話してくれました。実際に見た坂東さん製作のフレームは、今時のカーボンやアルミの自転車とは違い、自然素材、伝統工芸品としての美しさがありました。

竹用のノコギリ 通常のノコギリよりも刃が細かい

自作は簡単にはいかないでしょう。しかし話を聞き、作り方が「全く分からい」から、「もしかしたら自分たちでも作れるかも!?」と思えるようになったことは大きな収穫でした。

なお、耐久性も、未舗装路の山道を長距離走るレースも走破した実績があるそうで、通常乗る分には問題がありません。

竹弓の断面 竹やハゼの木などを貼り合わせてつくったもの。この構造が強いしなりを生む

ちなみに板東さん作の竹フレームはお値段30万円から。一台一台が手作りで手間と時間がかかりますが、様々な形状の自転車が作れます。

日本で竹自転車を作っている、この共通項だけでも、考えや思いが似ている人たちはいるものですね。板東さんには、アドバイスを今後もいただくことになっています。

経験も知識も無いところからスタートした竹弓フレームの製作。板東さんから学ぶべきポイントは多く、実りある見学となりました。

by M田中