大阪はあびこにある、Gerworksさんにお邪魔してきました。

山口の、「Spedagi Ato(スペダギ阿東」という団体が紹介してくれた、ブラジル出身のジェルソンさん。
彼が作っている竹フレームの自転車を見学させていただくのが目的でした。

アトリエ(ジェルソンさんが「僕は職人じゃない、アーティストです」と仰っていたので)に着くと、壁に掛けられたたくさんの竹フレームに迎えられ、一同歓声を上げました。

「なんてシックで素敵なんだ!」 美しくコーティングされたその竹フレームは、想像を遥かに上回る素晴らしいものでした。 塗装には、卵の殻を使ったり、漆塗りや螺鈿の技術を用いたり。息をのむ美しさでした。中には落ちていたカラスの羽を筆にして色を塗ったものも。

「同じものがあったらおもしろくないね。世界に一つのものを作りたい。わからないことがあったら一所懸命勉強して、それを生かして作る。だからとっても楽しい。」

勉強熱心なジェルさんは、ブラジルで過ごした幼少期、大好きだった飛行機の図解の本をお父様に買ってもらい、夢中になって読んだそうです。その時の知識が今、竹自転車づくりにとても役に立っているとのこと。

「自転車と飛行機ってとっても似てるよ。だから、今も自転車を作っていてわからないことがあったら飛行機の本を調べたりする。」 ブラジルでは溶接関係のお仕事をしていたそうで、これもまた、自転車づくりをする上で部品と竹を溶接する際の技術に非常に役に立っているそうです。

また、日本人のおばあ様は、よく、漆塗りのお弁当箱に弁当を作ってくれたそうです。そのお弁当箱が非常に美しくて、漆塗についても学んだとのこと。そう、これもまた自転車の塗装技術に大きく影響をしています。

人生に無駄はない。 ジェルソンさんのお話を聞いているとその言葉が頭の中でずっと鳴り響いていました。 これまで経験してきたすべての事が、今につながっていました。

ブラジルではなにもかも手作りの生活だったそうです。 味噌を作るといっては家族総出で豆をつぶしたりとワイワイ取り組み、とても楽しかったと教えてくれました。 何をするにも自分で作ってしまえばいい。

そういう意識をもって育っていますから、アトリエの奥にはなんと手作りの機械たちがズラリ! この機械のモーターは、使わなくなったルームウォーカーや洗濯機から外して取り出したモーターだったのです。もう、驚くことしかありませんでした(笑)

そうそう、一番大事な話。 そもそもジェルソンさんはなぜ竹自転車を作ろうと思ったのか。

それもまた幼少期の遊びが関係していました。 ジェルソンさんは近くに生えてあった竹をとってきて、自分で凧を作って凧あげをしていたとのこと。竹はとても身近な存在だったようです。

22歳で日本に来て、日本の竹を見たときに、その美しさに大変感動し、これで自転車を作ってみようと思い制作。
一番初めに作ったのが2007年。それから改良に改良を重ね、現在アトリエには役7台ほどのフレームが飾ってありました。

「不思議なことに、こうやって夢中で取り組んでいると自然に同じような志の仲間が集まってきて、ネットワークもつながって、本当にありがたいね」そう嬉しそうに仰っていました。

レースにも参加されていて、以前茨城で開催された24時間エンデューロに出場した時には優勝もされたそうで。

竹の強さに関しても専門機関で実証済み。「こんな強い竹見たことない」と検査員に驚かれたとか。 「まだまだ始まったばかり」ジェルソンさんは謙遜気味にそう言うけれど、どれだけ広がるのか竹バイクの可能性。

これから大活躍間違いなしだなと確信いたしました。 最後にとても心に響いた言葉。

赤ちゃんは転ぶことを恐れずに何度も立ち上がるね?それを大人は何でやらない?ここに行こうという目的が見えたら、そこに行くまで失敗してもその度に勉強をしてまた進んでいけばいいだけ。僕は大学に行ってないけど好きなことを好きなだけ勉強できる今が楽しい。今の大人はチャレンジする人がいなくなってしまったね。」

ちょっと最近消極的な生活をしていた私にとって、どストレートに投げ込まれた豪速球。 しかと受け止めさせていただきました。感謝。

(新田 晃子)