一昨年の秋は、携行食にいいかな?と干し柿を作りお世話になった人に送りました。
好評でしたので、また作りました。
地元の柿
地元を自転車で走ると柿の木を見かけますが、収穫されないままの木もあります。そこで、自転車部で活動する中で知り合った地元の方に聞いてみたところ、柿の木をお持ちのご近所の方を紹介いただき、しかも収穫させていただけることになりました。
柿が穫れない
面識の無い方から柿を頂くので恐縮でしたが、意外にも喜ばれました。柿の木は脆く折れやすいため、高齢化が進み自分たちで収穫するのは危険、でも、放置していると熟した実が落ちて地面を汚し、落ちた柿が腐って悪臭も発生するのでなんとかしたいと言われます。柿の木がそのままなのは、渋柿だからではなく、収穫が難しくて困っているとは思いませんでした。
収穫後
さて、そのような中、張り切って収穫させていただき、2日かけて皮をむき、残りは職場の皆様に配布しました。まるで干し柿屋のようでした(笑)
八ヶ岳ベースに吊るし、ほっとしましたが、2週間経ったある日、「柿が食われてるぞー」との知らせが!干し柿作りは一筋縄にはいきませんでした!!
これまで異常がなかったので油断していました。小動物かそれとも鹿か。現場検証を重ね、出来るだけ小動物が届かない場所に移し変えました。せっかく頂いた大切な柿です。やれることはやります!
イタチごっこ
これで大丈夫だろうと思っていると、2日後、見事にやられました(泣)カメラには額から鼻先にむかって白い筋のあるハクビシン(白鼻芯)が映っていました。
ハクビシンの届かない位置を予測し、吊るす場所を変えては食べられる、イタチごっこならぬ「ハクビシンごっこ」が続きましたが、この場所では干し柿を守れないと判断し、移動させました。
ハクビシンと人間の関係
ハクビシンの縄張り外になったからなのか、食べられなくなりましたが、全体の約2割以上が被害に遭いました。「お世話になった人に食べていただきたい」という想いで、しかも地元の方からご好意で頂いた柿を!と、いくら見た目が可愛らしくても「流石に食べ過ぎだろ!」と感情的になってしまいます。
しかし、自然と調和した生き方を心がけるものとしては、ハクビシンを単なる害獣としてみていいのか?とも思いました。そこでハクビシンについてウィキペディアや農林水産省のデータを調べました。
ハクビシンは、ジャコウネコ科に属し、山梨県や長野県では天然記念物にも指定されていました。江戸時代には少数が日本に生息していたとする説、明治時代に毛皮用として中国などから持ち込まれた一部が野生化したとの説などありますがはっきりしなかったため、2004年に外来生物法という法律ができた際にも特定外来生物には指定されず、鳥獣保護法では駆除対象にはなっていません。(農作物や生活被害を発生させている個体に限り、有資格者が許可を受けたうえで捕獲可能)
元々生息していなかったともいわれますが、繁殖力が強く、年々勢力を伸ばしており、ハクビシンによる農作物の被害額は2005年度から2016年までで2倍以上になりました。(4億2千万円:2016年)これは、海外からペットブームで輸入され、その後各地で定着が進み、特定外来生物に指定されたアライグマよりも速いペースでの増加です。
ハクビシンによる農作物被害の推移
年度 |
被害面積 (千ha) |
被害量 (千t) |
被害額 (百万円) |
2005 | 0.6 | 0.7 | 183 |
2006 | 0.8 | 0.7 | 230 |
2007 | 0.7 | 0.9 | 251 |
2008 | 0.8 | 1.2 | 319 |
2009 | 0.9 | 1.4 | 319 |
2010 | 1.1 | 1.8 | 377 |
2011 | 0.8 | 1.4 | 338 |
2012 | 0.8 | 2.1 | 433 |
2013 | 0.7 | 1.8 | 439 |
2014 | 0.7 | 1.7 | 461 |
2015 | 0.7 | 1.8 | 435 |
2016 | 0.7 | 1.5 | 428 |
農林水産省「野生鳥獣による農作物被害状況」より作成
このようなことを知ると、やはり、農家にとっては害獣と言わざるを得ないハクビシン、もしも自分が農家だったとしたら、ハクビシンを目の敵にしたかもしれないなあとも思います。しかし、動物の立場からしたら、別に人間を苦しめようとしたわけではなく、作物が少ない冬、美味そうな果物が目の前にあれば、森で餌を探すより、目の前の柿をなんとか食べようとするのは、当たり前だよなとも思います。でも、食べられれば、繁殖を助長し、さらなる被害にも繋がります。
ハクビシンとのやりとりだけでも、考えさせられました。きっとその他の害獣とよばれる動物との関係の背景にも様々な問題があるでしょう。
どう向き合うべきか
SNI自転車部は、自転車を活用しながら、自然と調和した生き方、人間本位ではない自然に譲る生き方を目指しています。そんな生き方をするには、この場合どうすべきなのか、今の私に明確な答えは出せませんが、ただの害獣として敵とみなすことなく、だからといって安易に食べるものを与えたらどんな問題が起こるのかなど考えをめぐらし、その時にできる最善を目指そうと思いました。
干し柿を作ったことで、こんなに色々な事を感じるとは思いませんでした。ただ、これは私が、5年前に八ヶ岳南麓に引っ越してきてから、自転車に乗って激坂を上ったり、薪割りをやったり、畑を耕すといったような生活を送る中で感じたことと通じるものでした。
ちょっと大げさかもしれませんが、自然に触れる体験は、充足感や幸福感を与えてくれたり、時には問題を気づかせてくれたりして、そこから色々な事を学ばせてくれるということです。
ブログを書きながら、引っ越してからの事を思い出し、様々なことを示唆してくれる自然に触れる行動を、今年はもっとしていきたいと思いました。
(M田中)