水に浸かった網戸を高圧洗浄機で綺麗にする

6度にわたり、SNI自転車部事務局員が今秋長野と福島で行った災害支援活動の様子、感じたことや、伝えたいノウハウなどを書いてきました。それは、読者の皆様になるべく実状を知っていただきたいと思ったからでした。
(記事は以下から読むことができます。未読の方、ご一読ください)

「第1弾災害復興支援 福島での活動」田中
「台風19号 ― 災害復興支援活動」坂本
「第1弾災害復興支援 長野での活動」宮田
「災害復興支援 再び長野へ」山田
「第2弾災害復興支援 長野での活動(後半グループ)」阿仁屋
「第3弾復興支援(番外編)」宮田

一連の復興支援活動によって、私たちが災害復興支援活動に携わる際に大切にすべきことが、おぼろげながらわかってきたような気がしています。それをまとめて本シリーズの締めくくりとします。
早速ですがこれがポイントです。順に説明していきます。

①作業前 安全面への配慮
②作業中 気負いすぎず、効率よりチームワーク優先で丁寧に
③作業中 被災者の心に寄り添って活動する
④作業後 災害増加の原因とその対策を考えて実行する

高圧洗浄機の使い方練習中

①作業前 安全面への配慮

怪我なく活動したいといつも思います。被災地では長靴に「踏み抜き防止インソール」を入れなかったがために、釘等を踏んで怪我をする人が毎日います。こうなると、役立つどころか、かえって迷惑です。これは一例ですが、同じようなことがないよう知識を得て準備します。ヘルメット、ゴーグル、マスクなどの装備、事前の安全確認、一緒に活動する人との意思の統一が重要である、と事務局員が再三書いてきたのはこの理由からです。結果オーライの姿勢はよくありません。災害復興支援活動はリスクを最大限下げるための準備をすることから始まります。

ミーティングで意思統一中

②作業中 気負いすぎず、効率よりチームワーク優先で丁寧に

ボランティアの多くはできる限りのことをしたいという気持ちを持っています。とても尊いことですが、役に立ちたい気持ちが「気負い」とならないよう気をつける必要があります。例えばそれは、活動において効率を極端に求める姿勢や、他の団体への対抗意識となって表れます。でも、甚大な被害状況に対して1人が1日でできることには限りがあります。私たちはプロではなく、活動も「仕事」「業務」ではありませんから、冷静に、やはり安全面を考えて効率の良さよりもチームワークを重視した方が、結果うまくいくことが多いのです。
私たちは、ずば抜けた体力があるわけでもなく、ガツガツ作業もしません。メンバー同士の特長を互いによく知り、相応しい役割を決め、適度に休憩を取って無理せず丁寧に活動することを基本としています。でも、泥出しをしたある家屋の住人から「業者さんですか?」と聞かれました。前日に同じ作業をしたどこかの大学生のボランティアより、かなり作業が進んでいたのだそうです。チームワークの良さは効率の良さにも繋がるのだと知りました。

大切なアクセサリー類もピカピカにします。
色々な作業があります。
被災者から心のこもった差し入れをいただく

③作業中 被災者の心に寄り添って活動すること

「心に寄り添う」とは、「相手の気持ちになって考えようとする」という意味ではないかと思っています。被災地ではよくNGワードが話題になります。例えば、「片付きましたね」とか「ゴミ」という言葉は被災者を傷つけることがあるという話です。ゴミのように見えても被災者には大事な品ですから。こういうことは相手の立場を想像すると防げるかもしれません。罹災証明、支援制度や保険会社との手続き、場合によっては新たな居住先の検討等々、被災者がすることは山積みなのです。私たちがお手伝いする家屋での作業は復興へのほんの一部だとわかると「片付いた」とは簡単にはいえません。
色々な被災者がいます。自分の状況を話したくない人、聞いてほしい人。毎日訪れるボランティアへの対応に疲れた人、喜んでお茶や差し入れまで出してくださる人。東日本大震災のボランティアの時、私は絶対に聞けないなと思っていたことを妻が被災者に質問してしまったことがありました。「ご家族は無事でしたか?」その集落では多くの人が亡くなっていたので私は内心ヒヤヒヤしていましたが、それをきっかけに辛かった3.11の思い出を話し始め、最後には「すっきりした」と喜びました。言葉一つ一つが問題なのではなく、「相手の気持ちになって考えようとする」姿勢が大事であり、さらに「必ず良くなる」と祈ることが心に寄り添うことなのではないかと思いました。

千曲川決壊場所近く

④災害増加の原因とその対策を考え、実行する

被災地で実際に自然の力の凄まじさを目にすると、最初は驚きますが、被災者の苦境をなんとかしてあげたい、あるいは「またボランティアに行こう」という気持ちが起こってきます。この気持ちが尊いのはもちろんですが、そこから進んで、「なぜこうなっているのか?」と原因を、さらに「どうすれば良いのか?」と対策を考えると尚良いと思います。原因は「地球温暖化とそれに伴う気候変動。」対策は、「自分のライフスタイルを、自然破壊のない、具体的には温暖化を促進しないものに変えること」とはっきりわかっています。自転車を使うことも有効な対策の1つです。被災地で見た惨状を、自分の生活と結びつけて考え、真の解決へ向かうことが必要です。

活動宅の屋根から

12月22日、また、長野県の穂保地区に行ってきました。既に最低気温は0℃を下回り、寒くなった中での活動です。ボラセンから割りあてられた活動先は、偶然にも以前もお手伝いさせてもらったお宅でした。最初にお手伝いしたときから、何度か電話で話したり、同地区の他の家で活動した際も車を駐車させてもらったりしていたので、既に気心が知れていました。これまで書いたような心がけで、今回も活動しました。活動後、外出先から戻った奥さんは、想像以上に作業が進んでいることに驚き、「夢のようだ」「来春までぼちぼちやろうと思ったのにこれで安心して年が越せる」「足を向けて寝られない」等々、心から感謝の念を私たちに伝えました。今後は、今のお宅から少し離れた場所でそば屋を営む新たな目標に向けて前に進むと笑顔で話されました。旦那さんは「ボランティアはすげえな、日本も捨てたものじゃない」と。私たちはそれらの言葉に心から「きてよかった」と思ったのでした。

ビフォアーアフター①木くずを拾いきりました。
ビフォアーアフター②屋根の上の不要な木くずを取りきる
各地から集まった「善意」のボランティア
ボラセンを運営する社会福祉協議会の人達
復興は多くの人に支えられています
復興を支える道具たち

この地区では、毎日、全国から休日返上で、自費でボランティアにかけつける人たちが1,000人以上(多い時期、は3,000人以上)集まったことで復興が着々と進んでいきました。「日本も捨てたもんじゃない」と旦那さんは言いましたが、私は人間も捨てたもんじゃない、と思いました。人間にはまだまだ可能性があるのではないか。温暖化抑制も希望を持って取り組んでいきたい。人間は善であるとの信頼を元に、生長の家の災害支援活動の担当部署の人間として、これからも全力を尽くします。

SNI自転車部長 岡田 慎太郎