森の中のオフィス勤務の私は、ジテツーやポタリングで自転車を利用していました。しかし昨年、肺の手術を受けることになり、手術後は、きつい運動を避け無理をせず体調を整えていました。自転車に乗ることが好きな私ですが、手術の影響による咳に悩まされていたため、坂道のきつい、ここ八ヶ岳では自転車を控え、代りに歩くことで体力回復に努めていました。 厳しい冬も過ぎ、季節が安定したころから少しずつ慣らすように自転車をこいでみました。手術前は体力の許す限りペダルを踏み込み、タイム更新を目指す走りを楽しんでいました。しかし、「少し走って休憩する。少し走ってから自転車を押す。また休憩する。」そのような走り方なら無理なく続けられると思い走り始めました。

ヒルクライム出場の決意

そんな中、新緑の自然の中を自転車好きの仲間と共に走る、この地域で恒例となっている、観音平(八ヶ岳連峰の最南、編笠山の中腹にある展望所)ヒルクライムというイベントが迫ってきました。観音平までの過酷な坂道を最後まで自力で登る自信はなく、参加をためらっていましたが、「少し走って休憩する。少し走ってから自転車を押す。また休憩する。」の走りでもよいから参加しようと決意しました。

もう、後には引けません。観音平ヒルクライムのコースでは、スタートから約2㎞は壁のような上り坂です。

まるで壁のようなのです!!
まるで壁のような観音平の坂!!

それを想定して、まずは森の中のオフィスまでの登り坂、約2.3kmを休憩せず登ることを目標に走り始めました。体調が良かったのかペダルがよく回り、森の中のオフィスまで登れました。そこで引き返す予定でしたが、気持ちがよく「もう少し上まで」と次の交差点まで登りました。体が軽かったのか、気持ちよさがペダルを軽くしてくれたのか、「ならばあそこまで...ここまできたらもう少し...」と、気が付いてみれば全長約4.7kmの距離を少しの休憩で登ることができました。

「もう少し上まで…ならばあそこまで…ここまできたらもう少し…」
後ろから押してもらえたかのように登れた天女山への4.7km

このとき走ったコースは、観音平ヒルクライムとほぼ似たような条件であり、それを登りきれたのです。自分の体力がこれほど回復していたこと、自然との一体感を感じられたこと、 そして 生きていることのありがたさを感じることができたこと。実際のタイムは手術前よりかなり遅くなりましたが、こんなに気持ちのよい走りは久しぶりでした。

観音平ヒルクライム、GOALの瞬間! 満足の笑顔(笑)

自転車の楽しみ方

今までのように気負わず、「少しだけ乗ってみよう」と思ったのですが、気持ちが乗ってきてグングンとペダルも回りました。とにかく気持ちよく、そしてうれしかったのです。 同じ自転車でも、その付き合い方はひとつではないのだと。懸命にペダルを踏み込んでタイムを更新したとき、あるいはゆっくりとペダルを回しながらさわやかな風をほほに感じるとき、あるいは仲間と一緒に少し遠くまで散策してみるなど、自転車を楽しむ乗り方は色々あるのだと、今更ながら改めて感じました。

苦しい登り坂の先に、観音様のようにやさしく迎えてくれる観音平の眺め

もし、あまり自転車に乗ったことがない方でも、自転車をお持ちでない方でも、ご自宅の自転車に乗ったり、レンタサイクルを借りたりして、ペダルをこいでみませんか?今まで忘れていた自然の風の心地よさや、移り行く風景に心惹かれ、きっと自然との一体感を味わうことができるはずです。まずは目の前にある自転車を使い、楽しむ気持ちでペダルをこいでみましょう。そこから、きっとあなたに合った、楽しい自転車ライフが見つかるはずです。

田中 尚