私はブラジル生まれの日系三世で、28年前に家族と共に来日しました。

先月7年ぶりの一時帰国をしました。

皆様ご存じの通り、ブラジルは日本から見て地球の裏側にあります。直接行くことはできないので、今回は中東経由で帰ることにしました。ドバイからサン・パウロに向かい、以前から興味があったホルムズ海峡とアフリカ大陸の上空を通過するルートで、大西洋を渡って26時間以上かけてブラジルに着きました。

2週間の短い滞在でしたが、私が育ったサン・パウロ市が、7年の間に大きく変わっていたことに驚きました。とくに驚いたのは、自転車の利用者が増えていることでした。

貧富の差が激しいブラジルは、治安が悪く、さらに交通安全面からも自転車に向いてない都市だと私は思い込んでいました。7年前には自転車で通勤することはとても危ない行為だと、私は勝手に思っていました。

しかし、ブラジルの情報サイトによると、近年の交通網の混雑や燃料価格の上昇、環境問題への関心、そして身体の健康維持の理由で自転車を利用する人が毎年増えているそうです。(https://www.cpt.com.br/noticias/aumenta-o-numero-de-ciclistas-no-brasil)

サン・パウロ市のどこでもサイクリストの姿がみえます。上はジュセリノ・クビテェク通り。

 

ブラジルの検索サイト、Site Terra (サイト テハ)の2019年10月9日の記事によると、ブラジルには現在7000万人のサイクリストがいると推定され、それは国の人口の3分の1に相当するものです。連邦政府は4年間でブラジルの4大都市だけでもサイクリング・ロードを133%増設し、その総距離は3,291kmとなりました。サン・パウロ市政府はとくに環境問題を改善するために約500kmのサイクリング・ロードを設置し、さらに増やす計画があるそうです。

(https://www.terra.com.br/noticias/dino/mercado-de-bikes-promete-manter-crescimento-em-2020,4babd718c052282bb3036234e2e3250cg9e7oswp.html)

 

サイクリストに聞いてみました。

勇気を出して、一般の方に近づいて、インタービューをしました。ブラジル人はフレンドリーで喜んで受けてくれました。

パウロ・トルストイフ氏はご夫婦で自転車を楽しんでいました。

この日は遠い自宅からサン・パウロ市の中心まできてサイクリングをしていると話してくれました。パウロさんは若い頃から自転車が好きで、休みの日には仲間と共に自然の中を走っているそうです。

サン・パウロ市の複雑な道路事情は怖くないかと聞いてみました。彼によると、最近は、車やバスのドライバー達とサイクリストのお互いへの理解が深まり、尊重できるようになりました。もちろん、安全装備を常に利用することは大事だと言っていました。

 

サン・パウロ市のサイクリング・ロード

 

大都市だけではなく、田舎にもサイクリング・ロードが増えています。

サン・パウロ州、グァラチンゲタ市

サン・パウロ州、ロレナ市、自転車の駐車所

 

サン・パウロ市、パウリスタ大通りのサイクリング・ロード

サン・パウロ市で最も有名であり、ポストカードになることも多いパウリスタ大通りでは、自転車が溢れている様子を見ることができました。パウリスタ大通りは大手銀行や大きな会社のオフィスが集結していて、車やバスで一日中渋滞するところです。

ここでは過去に自転車を巻き込む死亡事故が頻繁におきていて、サイクリスト達は、以前から安全に走ることのできるサイクリング・ロードの設置を求めていました。その強い希望が叶い、2015年にサイクリング・ロードが完成しました。

パウリスタ大通りのサイクリング・ロード

パウリスタ大通りのレンタルバイク

 

パウリスタ大通りは週末になると歩行者天国になって、アートや文化的イベントが数多く開催され、サン・パウロ市民が家族と楽しむ場にもなりました。

日曜日に撮ったショット

 

自転車が増えることによって、環境保全にも大きく貢献できます。

 

パウリスタ大通りを利用する一人のドライバーが自転車に乗り換えると、一日、CO2の2kg削減ができます。それに加えて、渋滞によるストレスからも解放されて、健康面も改善します。

サン・パウロ紙には「この大都市の象徴である、パウリスタ大通りにサイクリング・ロードが建設されたことは、多くの人から自転車はより良い都市を創る素晴らしい道具であると認識され、大きな意義を示しています」と載っていました。

 

さらに「車は孤立した空間を作ります。その一方で自転車は隣の人と話しやすいため、友達を作る優れたアイテムでもあります。」と自転車の利用を勧めていました。

(https://sao-paulo.estadao.com.br/blogs/sao-paulo-na-bike/ciclovia-da-paulista-os-resultados-apos-quatro-anos/)

 

自転車の利用者が地球の裏側に増え、確実に環境に優しい社会が広がって行っています。地球の裏側にも、我々の運動に賛同する仲間がいる確認ができ、嬉しい、有意義な一時帰国でした。

Lauro Sakamoto